「逃げたりしてない?」
「腹がへっては戦はできぬだろ?」
苦笑いに椿は言った。それからさめた卵焼きをレンジで温める。
心の準備ができてないだけでしょ、とツッコミを入れたくなったが、それはお互い様なのでやめておいた。
「ちょうど卵焼きと、作りおきしといたシチューがあるんだ」
火がついてるコンロの鍋の中にそれはあった。乱切りされたニンジンやじゃがいも、茹でたブロッコリーがルーと絡み合って、グツグツ煮込まれていく。やがて、微かに白い湯気が立ちこみはじめた。
「ってか夏なのにシチュー?」
冬ならわかるのだけれど、今は六月下旬。外にはセミの合唱が響いており、夏の訪れを知らせている。そんな季節にシチューは似合わない。
「温かいもの方がいいだろ?さっきも体、冷たかったし。氷みたい」
切なげに椿は言った。それからまた言葉を紡ぐ。
「なぁ、胡桃は俺を助けた後、消えてしまうのか?」
消えるというか、正確にはあの世へ逝く。どんな場所か知らないからか、そこには椿も咲結も母さんも父さんもいないからか、不安がつきまとう。
本当は心残りのありなしに関わらず、逝きたくなんかない。離れるのは寂しいし、何よりまだ誰にも、さよならを告げれていないから。
「腹がへっては戦はできぬだろ?」
苦笑いに椿は言った。それからさめた卵焼きをレンジで温める。
心の準備ができてないだけでしょ、とツッコミを入れたくなったが、それはお互い様なのでやめておいた。
「ちょうど卵焼きと、作りおきしといたシチューがあるんだ」
火がついてるコンロの鍋の中にそれはあった。乱切りされたニンジンやじゃがいも、茹でたブロッコリーがルーと絡み合って、グツグツ煮込まれていく。やがて、微かに白い湯気が立ちこみはじめた。
「ってか夏なのにシチュー?」
冬ならわかるのだけれど、今は六月下旬。外にはセミの合唱が響いており、夏の訪れを知らせている。そんな季節にシチューは似合わない。
「温かいもの方がいいだろ?さっきも体、冷たかったし。氷みたい」
切なげに椿は言った。それからまた言葉を紡ぐ。
「なぁ、胡桃は俺を助けた後、消えてしまうのか?」
消えるというか、正確にはあの世へ逝く。どんな場所か知らないからか、そこには椿も咲結も母さんも父さんもいないからか、不安がつきまとう。
本当は心残りのありなしに関わらず、逝きたくなんかない。離れるのは寂しいし、何よりまだ誰にも、さよならを告げれていないから。


