夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

「その言葉を聞いて……おやじに会えない寂しさが一気に吹き飛んだ。きっと似ている人がいるのが……嬉しかったんだろな」

言葉を選びながら声に出していく椿。その栗色の瞳は透き通っていて、揺るぎない意志が伝わってきた。

あの頃の私は、椿のことをちっとも知らなかった。けれど頬を伝っていた涙の雫が、私に似てるように見えたのだろう。根拠はないけれど、そう信じたい。

「だからこうして今も、俺は生きている。胡桃の言葉が俺の世界に希望の光をくれたんだ」

一瞬、息を呑んだ。意味を理解してから恥ずかしくて、顔が熱くなる。気づけばその瞳から涙が溢れ出す。そのせいで視界は靄がかかったようになった。

「そんな……大袈裟だよ」

そう呟いた途端、温かいものに包まれる。

それが椿の体だと理解して、心臓の鼓動が早さを増す。幽霊だとわかっておきながら不思議な感じがした。

椿は私の体を包みながら、頭を撫でてくる。まるで壊れ物をさわるみたいに、優しく。

「幽霊だとわかってるけどさ、それでも……好きだ。胡桃のことが」

その言葉を耳にした途端。息をするのも忘れてしまいそうになった。

耳を疑い、目を凝らす。夢ではないと確信し、信じられない気持ちになった。

「好きでたまらなくて、だから……あの世になんか逝くな」

終始嗚咽混じりに椿は言った。