夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

まさか、そんなに大きなものだったなんて……。

「ほんと?」

聞かずにはいられなかったのか、気がつくとキッチンまで足が動いていた。それを見た椿はコンロの火を止めて、ぱぁっと顔を明るくさせる。

「ああ、本当だよ」

そう言って椿は呼吸をする仕草をひとつし て、意を決したように口を開いた。

「覚えてるか?小四のときのこと」

椿は私の真ん前に立っていった。その距離はおそらく、一メートルにも満たない。近すぎて、私は気づかれないように一歩だけ後退りした。

『小四』そのキーワードから思い出せるのは、たったひとつ。椿の過去の夢にもあった、あのメガネ屋での出来事。

『……泣いてる?』

まだ幼い私はそう呟いた後、どんな言葉をかけたのだろう。

ぼんやりしてた頭をフル回転させても、答えは見つからなかった。

「俺にさ、『大丈夫だよ。私も寂しい思い、たくさんしてるから』って言ってくれたんだ」

穏やかな口調で椿は言う。

率直に抱いた感想は、私らしいだ。

家族に会えない時間の方が多い。あの時も今も。その寂しさを何年も抱えていた。その弱々しい背中に。