夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

きつね色に焼かれていく卵焼きを眺めながら椿は呟く。私の気配を感じてるのだろうか。それはわからない。ただ私に向けられた言葉だとはわかった。

「幽霊にメガネをプレゼントするなんて、バカだよな」

私が今、耳にかけているのが、そのメガネ。淡いピンク色をしていて、淵が丸くて柔らかい感じに見える。度もぴったりあっていて、前の淡い茶色のメガネよりは気に入っているのだ。

だけど端から見たらその光景は、不気味でしかない。

「でも、それぐらい再会できたことが嬉しかった」

くれた日は今日から17日前、6月10日。紡神社で偶然出会った日。椿がメガネ屋に連れていってくれた。連行されたともいいがたいが。

椿にとって私という存在は、どんなものなんだろう。ふと気になった。おそらく単なるクラスメイトとかという、平凡な存在ではないような気がしたからかもしれない。だけど、そんなことあるわけないよね。

「どうして?」

「胡桃の存在が俺の生きる意味だから。これまでもこれからも」

「えっ……?」

予想外すぎて出てきた声はかすれていた。

心臓の鼓動が落ち着きを見せない。

私がいるから椿は生きてるってそういうこと?