夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

時計は二十二時をさしていたのでそのまま、眠りにつくことにした。


翌朝、窓越しに差し込む眩い日差しで重い瞼を開く。

隣を見ると椿の姿はない。私の指示通り、父の部屋で寝てくれたのだろう。

スマホで時計を確認すると早朝五時。目を覚ますには少し早い時間だ。おそらく椿はまだ、起きてないだろう。

ふとメッセージアプリを開いてみる。やはり両親からは何もきていなかった。

思えば幽霊にメッセージを送るだなんて、ホラー映画のように不気味だ。

納得していると、電話の着信音が鳴る。なぜか恐怖はちっともなかった。

「もしもし、咲結?早いね」

《そっちこそ》

その声と共に笑い声が聞こえてくる。

咲結らしい反応だと心底感心した。

《それよりごはん食べた?どうせ昨日も食べてないんでしょ?》

心臓がギクリと鳴る。腹は空きぐあいはというと、案の定全くない。普通の人間ならおかしいが。

「まぁね」

苦笑まじりに答えると、仁菜は肩をすくめたようにため息をついた。

《想い人の料理なら味、感じるんじゃない?》