「飯は?五日も飲まず食わずだろ?」
「お腹空いてないし、いらない」
椿の心配するような声に返すのはそっけない態度。
幽霊ってお腹は空かないんだな。それに結構歩いたはずなのに疲れもない。不思議だけどそんなことはどうでもいい。
「お前、なんかあった?」
ギクリと心臓が跳び跳ねる。途端、視界が滲み嗚咽が漏れた。自分の手で椿を助けることができないとわかって、悔しくて泣いてしまいそうなのだ。
でも泣いちゃいけない。もっと辛い思いをしているのは椿の方だもの。
「なにもない。もう……ほっといて」
嗚咽のせいで出てきた声はかすれていた。呆然とする椿をおいて、自室へと駆け出す。そしてカギまでかけて閉じ籠った。それからドアに背中を預けて、脱力したように座り込む。明かりもつけてないからか、顔をうずめなくとも視界は真っ暗だ。
「なにしてるの?こんなに暗いところで」
懐かしい声と共に電気がパチリとつけられる。反射的に顔をうずめ、目を合わせないようにする。その主がもちろん、仁菜だから。
幽霊はものをすり抜けることができる。よって部屋のカギをかけたとしても、無駄なことなのだ。逃げ場など、どこにもない。せめてノックはしてほしい。三度目だからか、もうすっかり慣れてしまったけれど。
「お腹空いてないし、いらない」
椿の心配するような声に返すのはそっけない態度。
幽霊ってお腹は空かないんだな。それに結構歩いたはずなのに疲れもない。不思議だけどそんなことはどうでもいい。
「お前、なんかあった?」
ギクリと心臓が跳び跳ねる。途端、視界が滲み嗚咽が漏れた。自分の手で椿を助けることができないとわかって、悔しくて泣いてしまいそうなのだ。
でも泣いちゃいけない。もっと辛い思いをしているのは椿の方だもの。
「なにもない。もう……ほっといて」
嗚咽のせいで出てきた声はかすれていた。呆然とする椿をおいて、自室へと駆け出す。そしてカギまでかけて閉じ籠った。それからドアに背中を預けて、脱力したように座り込む。明かりもつけてないからか、顔をうずめなくとも視界は真っ暗だ。
「なにしてるの?こんなに暗いところで」
懐かしい声と共に電気がパチリとつけられる。反射的に顔をうずめ、目を合わせないようにする。その主がもちろん、仁菜だから。
幽霊はものをすり抜けることができる。よって部屋のカギをかけたとしても、無駄なことなのだ。逃げ場など、どこにもない。せめてノックはしてほしい。三度目だからか、もうすっかり慣れてしまったけれど。


