バイバイと私に手を振って、軽快なスキップを刻みながら咲結は帰っていった。
「またね」
その後ろ姿を見えなくなるまで眺めて、それから「……咲結」と呟く。その存在は私にとって最高の第二の親友になりつつ、あった。
空がだんだんと薄紫色に染まっていく中、私は家までの帰路をとぼとぼ歩いていた。
足を進める度、自分の家が近づいてくる。中では椿が待ってくれている。心配させたくないし、咲結に背中を押されたからなんとかこうして向かっているところだ。
なのに……。時々足が、動かなくなる。私は幽霊であったから。時間がもうわずかなのを知ったから。私が椿を助けることはできないと仮定されてしまったから。言葉を交わすのも、顔を合わすことすらも躊躇われる。
そんな気持ちと葛藤している内に家に着いてしまった。ため息をついて渋々ドアを開ける。
そして慌てて靴を脱ぎ、逃げるように自室へと向かおうとした。その足を低い声に止められる。
「おかえり、遅かったな。大丈夫か?」
リビングから廊下に出てきた椿は心配そうな口調で言った。私は登っていた階段の途中で立ち尽くす。
「うん、大丈夫。父さんの部屋開いてるから今日はそこで寝て」
一緒に寝る気なんてちっともない。必ずどこかで言葉を交わさないといけなくなるから。
そう吐き捨てて、止まっていた足を進めようとする。だけど「待てよ」と背中越しに呼び止められた。
「またね」
その後ろ姿を見えなくなるまで眺めて、それから「……咲結」と呟く。その存在は私にとって最高の第二の親友になりつつ、あった。
空がだんだんと薄紫色に染まっていく中、私は家までの帰路をとぼとぼ歩いていた。
足を進める度、自分の家が近づいてくる。中では椿が待ってくれている。心配させたくないし、咲結に背中を押されたからなんとかこうして向かっているところだ。
なのに……。時々足が、動かなくなる。私は幽霊であったから。時間がもうわずかなのを知ったから。私が椿を助けることはできないと仮定されてしまったから。言葉を交わすのも、顔を合わすことすらも躊躇われる。
そんな気持ちと葛藤している内に家に着いてしまった。ため息をついて渋々ドアを開ける。
そして慌てて靴を脱ぎ、逃げるように自室へと向かおうとした。その足を低い声に止められる。
「おかえり、遅かったな。大丈夫か?」
リビングから廊下に出てきた椿は心配そうな口調で言った。私は登っていた階段の途中で立ち尽くす。
「うん、大丈夫。父さんの部屋開いてるから今日はそこで寝て」
一緒に寝る気なんてちっともない。必ずどこかで言葉を交わさないといけなくなるから。
そう吐き捨てて、止まっていた足を進めようとする。だけど「待てよ」と背中越しに呼び止められた。


