夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

仁菜はそう言ってドアノブに貼られている何かをのけはじめた。音を聞く限りガムテープのようだ。しかも何枚も複雑に貼り付けられているらしい。

「えっと……このガムテープ複雑すぎ!いくらなんでもひどすぎよ」

チッと舌打ちをしながら仁菜はそう言った。そしてやっとのことのように最後の一枚は剥がされ、個室の扉は開かれた。

仁菜はすぐさま泣きながら私にとびついてくる。

「もう心配したんだから。早く言ってよね。よく頑張ったね。偉いよ、胡桃は」

水をかけられたせいでまだ乾いていない私の頭を撫でながら仁菜は優しくそう言った。

あとから聞いたことだけれど、前から変に思っていて訳を聞こうと校門で待っていてくれていたのだが、いつまでも来なくて探しにきてくれたらしい。

私は嬉しくて子供のように声を出して泣いた。

仁菜は私が泣いている間、何も言わずただ背中をさすってくれた。

まるで温かい何かに包まれたような感覚。この上なく幸せに思えた。

その夕方、『大木公園』の木に登って、いつものように枝に腰かけた。せっかくなら思い出の場所で話してと頼んできたからだ。

「辛かったね。よく頑張ったね」

私の話を聞いて仁菜は穏やかにそう言った。