夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

「私なんかと会いたいって祈ってくれてありがとう。こうしてまた、話せてよかった!」

無意識のうちに咲結の手を、両手で包んで言った。嘘偽りがひとつもない、本音からの言葉を。

「もう、泣かないでよ!あとどれぐらい話せるかもわかんないから」

笑いながら咲結は言う。慌てて頬に触れると、確かに涙の雫が伝っていた。

嬉し泣きなんて何年ぶりであろう。いや、生まれて初めてかもしれない。もう、死んでるけれど。

もらい泣きをしたのか、咲結の瞳からも雫がぽとり。笑っているのか、泣いてるのか、わからない顔を浮かべていた。

雲ひとつない茜色の空の下、二人そろって笑いあう。その声は初夏特有の生ぬるい風にのり、宙へと消えていった。

この上なく幸せなひととき、そう表したとしても過言ではなかった。

ああ……どうして私は大木なんかから自殺しちゃったんだろう。

理由はとっくにわかっているのに、後悔を覚える。

「さてと、私は満足したし、東山君のとこに行っておいで」

ひとしきり笑いあったあと、咲結は言う。それから強く背中を押された。

気づけば西の空に浮かぶ夕陽は地平線の彼方に沈もうとしていた。

「今日はありがとう、帰るね」

私は笑顔を浮かべてからその場を立ち去ろうとする。

「あの世に逝くまでに困ったことあったら言ってね。私は胡桃の味方だから。じゃ、またね」