「だからね、私は祈ったの。胡桃に助けてもらう数日前……6月10日の夕方に。胡桃と会って仲直りがしたいと。そしてもう一回、何でもないような話をしたいって」
一瞬、聞き間違いをしたのかと思った。
6月10日って私が亡くなった、次の日ではないか。そんな前から祈ってくれていたなんて。
思わずゆっくりと顔をあげる。メガネをわざとはずしていたままだからか、遠くの視界はぼやけて見える。けれど近くにいる咲結の姿はくっきり目に映った。そんな私を見て彼女は満面の笑みを浮かべる。
「正直、本当に会えるとは思ってなかった。その上、ロッカーに閉じ込められた私を助けてくれるだなんて」
確かに今思えば、信じられないことだ。夢のまた夢のような奇跡みたい。
咲結は笑顔で、それでもまっすぐに言葉を紡ぐ。
「夢じゃない。そうわかって嬉しかった。死にたい思いさえ、吹き飛ぶぐらい。拍子抜けもしたけれど」
そう言って咲結はクスリと笑う。自然と私も顔がほころぶ。細い糸でしか結ばれていなかった友情が今、しっかりと結ばれたような気がした。
「祈りって叶うこともあるんだね。会いに来てくれて助けてくれて本当にありがとう」
「……咲結」
名前を呼ぶと、彼女は花開くような最高の笑顔をくれた。
人に言える取り柄なんて何にもないちっぽけな存在の私なのに。
そう思うと、あり得なくて動揺が隠せない。
一瞬、聞き間違いをしたのかと思った。
6月10日って私が亡くなった、次の日ではないか。そんな前から祈ってくれていたなんて。
思わずゆっくりと顔をあげる。メガネをわざとはずしていたままだからか、遠くの視界はぼやけて見える。けれど近くにいる咲結の姿はくっきり目に映った。そんな私を見て彼女は満面の笑みを浮かべる。
「正直、本当に会えるとは思ってなかった。その上、ロッカーに閉じ込められた私を助けてくれるだなんて」
確かに今思えば、信じられないことだ。夢のまた夢のような奇跡みたい。
咲結は笑顔で、それでもまっすぐに言葉を紡ぐ。
「夢じゃない。そうわかって嬉しかった。死にたい思いさえ、吹き飛ぶぐらい。拍子抜けもしたけれど」
そう言って咲結はクスリと笑う。自然と私も顔がほころぶ。細い糸でしか結ばれていなかった友情が今、しっかりと結ばれたような気がした。
「祈りって叶うこともあるんだね。会いに来てくれて助けてくれて本当にありがとう」
「……咲結」
名前を呼ぶと、彼女は花開くような最高の笑顔をくれた。
人に言える取り柄なんて何にもないちっぽけな存在の私なのに。
そう思うと、あり得なくて動揺が隠せない。


