確かにあちらで何とかしてくれるのはありがたい。けれどそうして残された椿は満足するのだろうか。幸せな人生を送れるようになるのだろうか。咲結も納得してくれるのだろうか。
そんな不安が募ってくる。あの世への案内人並びにこの紡神社の守護神とわかっていても、安易に信じるのはどうかと思う。
「少し考えさせて」
「わかりました。ですが、最終日となったら何がなんでも逝かせますからね。それでは」
紡さんはそう言って、神社を去る私を見送る。本当にわけのわからない人だと改めて思った。
初夏の生ぬるい風に吹かれて、私のセミロングの髪がゆらゆらとなびいている。
雲ひとつない青空の下、大木公園のブランコに一人、私は腰かけていた。
理由は家に帰るのが怖いという端から見たら単純なものだ。だが私にとっては深刻な悩み。家に帰れば椿がいる。学校に行けば咲結がいる。二人と顔を合わせるのは、今が一番怖い。
たぶんこの感覚は、生まれて初めてのような気がする。私は既にこの世に存在していない者だから。どんな顔をして会えばよいのかわからないんだ。
音もなく椿から貰った淡いピンク色のメガネを外す。途端に視界はぼやけて誰も遊んでない遊具に靄がかかる。
もう何も見たくはなかった。この世界に受け入れられて、確かに存在しているものたちの姿を、何もかも。それを目にする度、自分はこの世界に受け入れられてないんだって、痛いほど痛感させられる。そして無性に、涙が溢れてくるんだ。
そんな不安が募ってくる。あの世への案内人並びにこの紡神社の守護神とわかっていても、安易に信じるのはどうかと思う。
「少し考えさせて」
「わかりました。ですが、最終日となったら何がなんでも逝かせますからね。それでは」
紡さんはそう言って、神社を去る私を見送る。本当にわけのわからない人だと改めて思った。
初夏の生ぬるい風に吹かれて、私のセミロングの髪がゆらゆらとなびいている。
雲ひとつない青空の下、大木公園のブランコに一人、私は腰かけていた。
理由は家に帰るのが怖いという端から見たら単純なものだ。だが私にとっては深刻な悩み。家に帰れば椿がいる。学校に行けば咲結がいる。二人と顔を合わせるのは、今が一番怖い。
たぶんこの感覚は、生まれて初めてのような気がする。私は既にこの世に存在していない者だから。どんな顔をして会えばよいのかわからないんだ。
音もなく椿から貰った淡いピンク色のメガネを外す。途端に視界はぼやけて誰も遊んでない遊具に靄がかかる。
もう何も見たくはなかった。この世界に受け入れられて、確かに存在しているものたちの姿を、何もかも。それを目にする度、自分はこの世界に受け入れられてないんだって、痛いほど痛感させられる。そして無性に、涙が溢れてくるんだ。


