「あなたは今から十四日前、つまり六月十日にここに祈りに来ましたよね?仁菜様に会いたいと」

紡さんは確認するように聞いてくる。この神社の守護神なのだから私がここで祈ったのを知っていてもおかしくはない。

「その仁菜様から名前をお聞きしました」

なるほど。それなら納得だ。

「って、紡さんにも仁菜の姿は見えるんですか?」

幽霊なのに!?

「当たり前です。私はあの世への案内人ですから。仁菜様を案内しなければなりません」

紡さんは腰に手をあてて、偉そうに言う。さっきの態度と打って変わってるし、見た目ともあってないからほんと、わけのわからない人だ。

確かにそう。人は亡くなればあの世へと行かなければならない。紡さんはその案内をしてるんだ。

案内と言ってもそれは何をするのか。それはいつか、本で読んだことがある。その通りであれば、未練解消だ。

幽霊となってこの世に取り残された人達は未練解消を終えなければあの世にはいけないらしい。そして亡くなった日から四十九日経ってもそれが終えれなかった場合は地縛霊になってしまうらしい。全て本を読んで知った限りの話であるが。

「そしてあなた、胡桃様も」

紡さんの柔らかい声にハッと我に返る。それと同時に一瞬、耳を疑った。