さすがにないとは思うけれど。というか、言ってる自分自身が少しもお腹を空かせていないのはどういうことなのだろうか。

「まさか、勝手だけどキッチン使わせてもらったよ」

椿の言葉に安堵を覚える。

「GPSで見つからないよう、スマホの電源は切ってたし、誰かきても梅野が来たとき以外は出なかったし」

「咲結が来たの?」

「ああ。二、三回程度な」

穏やかな口調で椿は言った。安堵するのもつかの間、頭は混乱している。

思えば五日も返事なしで学校も来てないのはさすがに、心配して来るのも無理もない。

「咲結、なんか言ってた?」

単なる好奇心から聞いてみる。

「特に何も。しいて言うなら学校のプリントとか毎日届けに来てくれてたし、俺のこといろいろ誤解してたって謝ってきてた」

「そっか」

問題的なことがなかったことに全身の力が一気に抜ける。

「私、行かなきゃ」

あの成人女性をかなり待たせているのかもしれないし。意味わかんない人だけど待たせるのは失礼だ。

椿がようやく体を解放してくれたのを確認するとゆっくり体を起こす。