重たい瞼をゆっくりと開く。途端に目に飛び込んできたのは、元々の視力が悪いせいでぼやけた天井。辺りを見渡せば、見慣れた内装の部屋。どうやら長い夢からようやく、抜けだせれたようだ。

布団の上に転がっていた、淡いピンク色のメガネをかけると、視界がくっきりはっきりしてくる。

長いこと夢を見ていたからであろう、体がものすごく重い。

なんとか起きあがろうとしても起きあがれない。いや、誰かに強引に寝転ばさせられた?

隣には椿が私の腰に両手をまわしたまま、寝転がっている。

そっか。昨日はあのまま二人並んで眠りに落ちたんだった。

「って、ちょっとなにこれ!?」

反射的にそう叫んだ。まるで私の体は椿の抱き枕にされているようだ。

「ん?ようやく起きたか」

間の抜けた反応をした椿は安堵の笑みを浮かべた。それから抱き枕にしていた私の体を離すどころか、さらにきつくしがみつくように抱き締めてきた。

「ちょっと、どうしたの?東山君」

体の距離が近い。互いに見つめあう形で横になっている私達。顔の距離もやけに近く、四十センチにも満たない。心臓はバクバクと鼓動を早め、その音が椿に聞こえていても、おかしくはなかった。

椿はいつもと違って長い前髪で目を隠さず、栗色に透き通った目で私を真剣に、そして真っ直ぐに見つめてくる。だからか、顔が熱くなった。