辺りは黒に染まる。長い夢もようやく終わりを迎えるのだ。やっと出られることに心の底から安堵した。

「さてと、あっという間でしたね」

いつの間にか私の前に現れた成人女性は穏やかな口調でそう言った。

「あなたは……誰?」

何度目かの問いをただす。さすがに約束はときなのだから、答えてくれるだろう。

「この町にある紡神社を知っていますか?」

「はい。ゆかりのある場所です」

反射的にそう答えた。

十日ほど前のことが脳裏に蘇る。私はあの場所で親友である仁菜に、もう一度会いたいと祈った。その結果、幽霊の姿になって彼女は私の前に現れてくれた。一度だけではなく、四度も。

さすがに彼女自身にもなんらかの理由があって、会いに来てくれていると改めて理解する。

だけど、その場所と彼女と願いとに一体どんな関係があるというのだろうか。

「夢から目覚めたら真っ先にお一人でそこへ来てください。説明はそれからです」

へ?

予測不能なことを言われ、思考がついていかない。そんな私を知りもせず成人女性は言葉を紡ぐ。

「私はその神社の守護神、並びにあの世への案内人を務めている者です」

成人女性の言葉を理解する間もなく、辺りは光に包まれた。

長く不可思議な夢はやっとのことで、終わりを迎えたのであった。