夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

「どうした?なにがあった?」

焦りを含んだ口調で問いかけるお祖父さん。その声で我に返った椿はしまったという顔をする。

「ごめん、今日は俺、やっぱり帰るわ」

そう冷たく吐き捨てて、逃げるようにその場を去っていった。

その姿をお祖父さんはぽかーんと空いた口も塞がらずに唖然とみていた。

そんなお祖父さんを知らずに私は慌てて後を追うように引き戸をすり抜ける。

このまま、椿が自殺にでも走ってしまうのではないかと嫌な予感がしたからだ。

心も体もボロボロのくせに、すばやくアスファルトの地面を走っていく椿。私の全力の走りでも追い付けず、あっという間に姿を見失ってしまった。

「無理に追いかけなくてもいんですよ」

柔らかい声と共に辺りは黒に染まる。場面展開の合図だ。

声の方に顔を向けると、やはり白一色のワンピースを着た成人女性が私を真っ直ぐに見つめながら仁王立ちしていた。会うのはもちろん、二回目である。

「大丈夫です。結局、高一になられた今でも生きているのですから」

揺るぎのない声で成人女性は言った。

それもそうだ。夢の外____現実でも椿は生きている。そして私の隣で寝ている。もう随分長く夢を見ているからおそらく二日は経っていてもおかしくないだろう。

そのことがわかった途端、全身の力が一気に抜けた。安堵感を覚えてその場に座り込む。