夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

「昔はじいちゃんもよく親にあらがってたもんだ。隙を見てはゲームをしたりしてな」

懐かしむような顔でお祖父さんは言う。意外にも平凡で失望したけれど、子供というのはそういうものだろう。

「そんなもの、七十年も前にあんの?」

七十年も前といえば千九百五十年代、ちょうど戦争が終わって間もない頃だ。そんなときにゲームが普及しているとは到底思えない。

「今でいう、ゲーム機じゃねぇぞ。ただのサッカーだ。試合のことを英語でゲームというだろ?」

思わずズッコケそうになる。最初からそう言ってくれればよかったのに。わざとそうして会話を盛り上げようとしているのも一理あるが。

「おやじ……」

椿が苦笑しながら呟くのも無理もない。

「さっきから思ってたんやけど、なんか矛盾してないか?」

訝しげな顔をしてお祖父さんは言った。

「矛盾?」

「言ってることが食い違ってるってこと。おまえの場合、家族の関係はうまくいっていると言ってたが、玄関では抜け出してきたとか言ってなかったか?」

それもそうだ。嘘をつくのがどうも下手である。

図星を突かれたことに椿はしまったとでも言っているような顔をする。それから「叶わねぇわ、おやじには」と諦めたような笑みを浮かべた。