夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

「椿か。久しぶりじゃのう。まぁあがりな」

お祖父さんは目をまん丸に見開いて驚いた表情をしてから、顔をしわくちゃにして微笑む。それから椿を家に招き入れた。

「それにしても大きくなったな。この前までゆりかごと同じぐらい小さかったのに」

湯飲みに緑茶を入れ、和室の畳に胡座をかいたお祖父さんは年寄りくさいことを呟くように言った。

「よせよ、おやじ。俺はもう、こどもじゃないんだからさ」

愛想笑いをしながら椿は言う。さすがに中一にもなって子供扱いはごめんなんだろう。

そんな椿を見ていると、心底むなしい。無理して笑っている椿がいまにもどこかに消えちゃいそうでそれぐらい儚かった。

無情にも瞳から大粒の涙が溢れてくる。辛い。苦しい。でも、この夢を最後まで見届けたい、そんな気持ちと葛藤していた。

「ガハハ、そうだったな」

お祖父さんは椿の頭をポンポンして豪快に笑う。それから話を切り出した。

「あれからどうだ?」

「おやじの言う通りやってるよ。そしたらほんとだった。すげぇな、おやじ」

カラカラと笑いながら椿は言った。それはまぎれもない嘘である。いい関係どころか、悪くなるばかりだ。

「そうか。よかったな」

ため息をつきながらお祖父さんは言った。たぶん、既に椿の嘘は見破られているであろう。あえて安堵を演じ、話すのを待ってくれているのが私にはわかった。