夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

そこで成人女性は言葉を止めた。私が声を遮らせたからだ。

「もしかして……」

最初からこの長い夢を誰かに見せられているような感覚がしていた。その誰かはこの成人女性なんじゃないかって。

まさかとは思うけど話の流れからして、きっとそうなのであろう。

「その通り。私が見せていたんです。この東山椿様の過去を夢という形で胡桃様に。なのに逃げ出そうとするなんて」

……ばれてたか。

「すみません」

確かにせっかく見せてくれてるのに逃げるなんて卑怯で失礼だ。さっきまでの自分がイヤになる。

「でもそれなら尚更、なんで」

今初めて会ったばかりの人なのに。もちろん、何かしてあげた覚えも頼んだ覚えもない。

「それも夢の終わりで話しましょう」

成人女性はそう言ってまた、陽だまりのような笑顔を浮かべる。どうやら私の疑問に答えるつもりはやはりなさそうだ。

「大丈夫です。交わした約束はちゃんと胸において、そのときになったら話しますから。破ったりはしませんよ」

ほんとかな?まだ疑っている目で成人女性を見つめるけれど、さっきと変わらない温かな笑みで、嘘を突いているようには見えなかった。