夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

「ここはいつもすっごっくいいお祖父さんがいるんだけど……」

父さんが呆れてため息を突いているのも知らずに母さんは話を元に戻す。それから何かに驚いたのか目を丸くした。

その視線のさきを見てみれば、カウンターに立っているのは小四の椿だ。お祖父さんの姿は見当たらず、何らかの理由で店番を頼まれたのだろう。

小四の椿は緊張しているのか、肩を震わせている。長い前髪で栗色の目をすっぽりと隠し、おまけにパーカーについていたフードまで被っている。だからか、表情は確認しにくい。でもあたふたしているのはわかる。まさか初めて、店番を頼まれたときに客である私達がくるなんて、思ってもみなかったのだろう。

「今日はいないみたいだな。そこの坊主、何か知らないか?」

辺りをちらちらと見渡してから父さんは小四の椿に話を振った。当の本人はそのことに戸惑いを深め、しばらくしてから口を開いた。

「あの……じいちゃんは今、散髪用のハサミを家まで取りに行って……ます」

小さな声で小四の椿が言う。どうやらかすれ声はとうに回復したようだ。それにしてもなんだか、子供があたふたしているところを見ていると可愛くて、思わず噴き出してしまう。

咄嗟に辺りを見渡してみたけれど、その笑い声は誰にも届いていなかった。安心したつかの間、妙なもどかしさが胸に込み上げてくる。いくら大声を出したって夢の中じゃ誰にも聞こえない。誰も反応をしてくれない。