夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

思えば椿が謝る理由なんてどこにもない。悪いのはどう考えても椿の母だ。

他人の前ではいい人ぶる。そして自分の理想が崩れたら、たとえ実の息子であっても、暴力を振るってしまうような、自分勝手で無責任な人。親としては致命的ではないのかとも思う。

どうしてこんな人と結婚したのだろうと夫に問い詰めたくなる気分だ。

そんな苛立ちが生まれても、目の前で二人が抱き合っている姿を目にしたら、灰の粒となって宙に消えていった。たとえ消えなかったとしても、この状況で抱く思いとしては好ましくなかった。

「心配させたよな?本当にすまん」

包んでいた小さな体を離しながらお祖父さんは言った。きっと椿の母の『今後は預けることもないと思いますから』という言葉に少なからず、何かを察して会いに行くのも失礼だろうと、気を使ってしまったのだろう。

「うん。大丈夫……だったよ」

ひきつった笑顔を浮かべながらも小四の椿は言う。

きっとそれは嘘であろう。この三年分の長い夢を一度に見た私だ。この推測が外れることなどあまりないだろう。あの中で椿は恐怖と孤独と、体に入れられたたくさんの傷に耐えながら、それでもいつかあのお祖父さんの笑顔に再会できることを夢見ていた。

それは叶った今でも同じだ。その笑顔をできるだけ長い時間、目に焼き付けておきたいから、大丈夫と自分に言い聞かせて、悲しみを隠そうとしている。

「嘘なんだろ?相変わらず下手だな」