夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

思ったよりも高い。

子供だったら平気かもしれないけれど、怖さを感じてしまうのは痛みを知っているからかもしれない。

ギュッと手に力を入れて、それでも私は上へ向かった。

一番上に行くにはかなりの労力がいる。体が重いから幼い時のようにするするとは登れない。即ち、地面から一番近くてかつ、空がきれいに見える高さに腰かければいいのだろう。

とはいえ、腰かけるほどの太さの枝にたどり着くまでは遠かった。時々木から落ちそうになったこともあった。でも登り始めたからにはゴールにはたどり着きたくて、力を振り絞った。

ようやく腰かけれそうな枝分かれを見つけ、そこに座る。下を見てみれば随分登ったのか地面が遠くに見えた。きっと五メートル以上は上なのだろう。

そんなことを考えていると、ぞくぞくと鳥肌がたった。

下を見るのはやめよう。ため息をついてから空を眺める。

ちょうどぽつぽつと雨が降ってきた。

空はもちろん、灰汁をかきまわしたような鉛色に染まっている。

寂しい色。この悲しい現実と似ている色だった。

頭の中にはまた、仁菜の顔が浮かぶ。

どうして気づけなかったのだろう。

自殺する直前まで知らなかった、いじめられていたという事実。

クラスが違ったから仕方ないけれど、それは言い訳にしか聞こえないだろう。