夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

淡くて脆い悲しい本音。幼い椿を虐待していた理由もきっとそれなのだろう。

「あのお祖父さんやろう……二度と髪を切らせるなんてさせてやらないんだから。仕方なく産んでやったんだから髪ぐらい私の好きにさせてよ。もう……一生会わせてあげないから」

掠れた声で椿の母は吐き捨てた。

途端にぞっと寒気がする。恐ろしいものに襲われているような感覚がして、足がすくんだ。


それから幾度となく、場面転換が行われ、その度に椿の人生は絶望の色に染められていった。

椿の母はお祖父さんに「この前はお世話になりました。今後は預けることもないと思いますからご心配なさらずに。では、さようなら」と冷たい言葉を言い残して、それきり椿がお祖父さんに会うことはなくなってしまった。

警察である椿の父の前では幸せな家族を装い、椿も誰にも言うなと脅されて相談するなんて夢のまた夢となった。

それに虐待もだんだんエスカレートしていった。最初はビンタや頬を殴られるだけであったが、しだいに腹や腕、足を殴られ、腕にはカッターで切られたような傷痕がいくつも刻まれた。

そのため学校では気味が悪いと避けられ、嫌味を言われるようになり、椿は随時長袖の服しか着なくなった。

そんな孤独な日々が続き、何度目かの場面転換を終えた頃には三年が経っていた。

所々視界がぼやけているところからまだ夢の中だとわかる。その度にいつ終わるのだろうと不安が増した。きっと現実では一日以上時が経っているのだろう。