母が幼い椿の頬をビンタした音だ。実の息子だから普通はできないはずだろう。
「なんで短くしたの!?切らないでって言っておいたでしょ?」
怒りの宿ったそんな椿の母の低い声が静寂な玄関に響く。張りつめた空気になっているのが、嫌でもわかった。
それを聞いた幼い椿は顔をきょとんとさせた。
「僕、そんなの聞いてないよ」
母の怒声に怯えているのか、その声は震えていて小さかった。きっと口を動かすので精一杯だったのだろう。こんな最悪の事態の真っ最中だから無理もない。
椿の母はいっそう顔をけわしくさせてから、手のひらで拳を作った。それから勢いよくその拳を椿の顔面めがけて動かす。
危ない!
咄嗟にきつく目を閉じる。私にはそれしかできなかった。
本当は助けにいきたくてたまらなかった。けれど、ここは夢の中。何をやったって現実が変わるわけがない。せっかく生まれた勇気もすぐ水の泡となって宙に消えてしまう。
だからって黙って見ているのは居たたまれなかった。それで手を力いっぱい握りしめて、必死に押さえ込んだ。
バタン!
「なんで短くしたの!?切らないでって言っておいたでしょ?」
怒りの宿ったそんな椿の母の低い声が静寂な玄関に響く。張りつめた空気になっているのが、嫌でもわかった。
それを聞いた幼い椿は顔をきょとんとさせた。
「僕、そんなの聞いてないよ」
母の怒声に怯えているのか、その声は震えていて小さかった。きっと口を動かすので精一杯だったのだろう。こんな最悪の事態の真っ最中だから無理もない。
椿の母はいっそう顔をけわしくさせてから、手のひらで拳を作った。それから勢いよくその拳を椿の顔面めがけて動かす。
危ない!
咄嗟にきつく目を閉じる。私にはそれしかできなかった。
本当は助けにいきたくてたまらなかった。けれど、ここは夢の中。何をやったって現実が変わるわけがない。せっかく生まれた勇気もすぐ水の泡となって宙に消えてしまう。
だからって黙って見ているのは居たたまれなかった。それで手を力いっぱい握りしめて、必死に押さえ込んだ。
バタン!


