夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

幼い椿は不満そうな顔を浮かべながら言った。

『椿は母さんの言うことだけ聞いてればいんだから』

椿の母の今朝の言葉が蘇ってくる。彼もきっとその言葉を気にしているのだろう。

「母さんがじゃないぞ。じいちゃんはお前のしたいことを聞いている」

お祖父さんは先程と変わらない真剣な眼差しを向けて幼い椿に言った。

大事なのは椿、本人がどうしたいか。お祖父さんは意見を受け入れようとしてくれている。その言葉はなんだか勇気に溢れていて、何回聞いても飽きないような気がした。

幼い椿はしばらく沈黙したあと、意を決したように口を開いた。

「もうからかわれたくない。髪を切りたい」

「よく言った。よし!じいちゃんが切ってやろう」

高らかに微笑みながらお祖父さんは言った。そうして髪を切るはさみを取りに洗面所へと向かう。その背中はとても広く大きくて、たくましかった。椿がそれに憧れるのも当然だと思った。

急に視界は黒に染まる。場面転換の合図だ。同時にこれが夢の中であることを思い出した。

今まで夢を見たことはある。けれどこんなにリアルなのは初めてだ。それに椿の過去だなんて。まるで誰かが私に見せたくて見せにきたよう。その理由がどうであれ、椿を助けるにはまずこれを最後まで見るということが大切なのだろう。

視界が光に包まれる。辺りを見渡すと、古びた引き戸と靴箱がある。どうやら今いるのはお祖父さんの家の玄関のようだ。