夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

やっぱり受け入れられない。こんな悲しい現実。

もう一度あの公園に行きたい。そしてあの木に登りたい。ただ懐かしみたいだけなのかもしれないけれど、気づけば足はそこに向かっていた。

学校の近くの高台にある、『大木公園』。私と仁菜がそう呼んでいるだけで実際には『旧児童公園』という無機質な名前だ。

そこにはもちろん、ブランコやジャングルジム、滑り台などお馴染みの遊具がある。古いし、さびも見当たる。近くには新しい公園ができているので人はあまり訪れない。

そんな静寂に包まれた公園の真ん中でどっしりとそびえ立っている大木。ここの象徴だ。とはいえ、植物に詳しいわけではないので、木の種類をいまだに知らない。

とりあえず今は緑色の葉が生い茂っていて、夏のように感じる。秋には深い茶色の実をつけ、葉は紅葉し、冬には雪に埋もれている。季節の流れを感じらるいい大木だ。

その大木は細々と枝分かれしている。高さは十メートル以上もあり、ちょうど一般的にある電柱の高さと同じぐらいらしい。

私はその木を登ろうと一番低いところで枝分かれしているのにさっそく足をかける。とはいえ、朝っぱらから高校生が遊具で遊んでいる、なんて見られたくないので辺りを見渡した。

周りには誰もいない。ただ梅雨らしい生ぬるい風が私のボブの髪をなびかせているだけ。大丈夫。誰にも笑われたり邪魔されたりはしなされそうだ。

そう思い込んでから手と足を上部へと進めてゆく。