「そうだよね。東山君の気持ちも考えずに聞いちゃってごめんね。私は大丈夫だから」

人はどこか強がってしまう。弱いところを見られたら嫌われてしまう、恐れられてしまう、みっともない、恥ずかしい、そんな様々な理由で弱みを隠している。

それは自分の意志の上での行動である可能性が少ない。ほとんどが無意識だ。今の椿だってそう。きっと本当は泣きたいんだろうけれど、それを必死で我慢してる。

これ以上虐待されている理由を問いつめるのもいけない雰囲気がして、知って椿に寄り添いたい気持ちを心の奥に抑え込んで強がった。

「さあ、もうそろそろ寝よう。東山君は私の父さんのベッド使っていいよ」

椿の返答を待たずに私は自分の部屋へ行こうとする。

「待って、胡桃」

階段をのぼっていると椿に腕を掴まれ、逃げれなくなる。

「俺、胡桃と寝たい」

「へ?」

思わぬ言葉に頭にクエスチョンマークが浮かぶ。これって冗談だよね?

「お前の父のベッドを使わせてもらうのもなんか悪いし、胡桃と一緒に寝たい。いいかな?」

ぽかーん。

驚きのあまり口があんぐり状態になる。冗談ではないことはさすがにわかったけれど、異性と寝るなんて心臓が持たなさそうだ。