先生は心配したような顔で言った。
泣いているのがばれませんように。
私はそう心の中で祈りながら慌てたように教室を出た。
クラスのみんなも先生も唖然としていたようで、教室を出ていくのを止めようとした人は誰もいなかった。
息を切らしながらも廊下を走る。とにかく一人になりたかった。誰もいないところへ行きたかった。
その中で脳裏によぎったのは仁菜とのある思い出だった。
***
ある日の黄昏時。私と仁菜は大木のある枝に腰かけて話をしていた。
空を見れば茜色の透き通った空に雲が長くたなびいていて、それがとても綺麗に見えていた覚えがある。
まだ目が悪くない時だったから何もかもくっきりと見えて、何度見ても飽きないぐらい美しかった。
『ねぇ、仁菜。どうして私といつも関わってくれるの?』
小学三年生ながらにそんなことを不思議に思っていたのは、未だにわけがわからない。けれど、人見知りで孤立しがちだった私は、ほどよく優しくて人気者である仁菜に話しかけられて嬉しかった。でも気を使わせてしまっていると思って聞いてみたのだった。
『当たり前でしょ。私らは幼なじみなんだから』
仁菜はどうしたものかと顔をきょとんとさせながら言った。
泣いているのがばれませんように。
私はそう心の中で祈りながら慌てたように教室を出た。
クラスのみんなも先生も唖然としていたようで、教室を出ていくのを止めようとした人は誰もいなかった。
息を切らしながらも廊下を走る。とにかく一人になりたかった。誰もいないところへ行きたかった。
その中で脳裏によぎったのは仁菜とのある思い出だった。
***
ある日の黄昏時。私と仁菜は大木のある枝に腰かけて話をしていた。
空を見れば茜色の透き通った空に雲が長くたなびいていて、それがとても綺麗に見えていた覚えがある。
まだ目が悪くない時だったから何もかもくっきりと見えて、何度見ても飽きないぐらい美しかった。
『ねぇ、仁菜。どうして私といつも関わってくれるの?』
小学三年生ながらにそんなことを不思議に思っていたのは、未だにわけがわからない。けれど、人見知りで孤立しがちだった私は、ほどよく優しくて人気者である仁菜に話しかけられて嬉しかった。でも気を使わせてしまっていると思って聞いてみたのだった。
『当たり前でしょ。私らは幼なじみなんだから』
仁菜はどうしたものかと顔をきょとんとさせながら言った。


