「味みてないけれど、うまくできてると思う。食べよう」
そう言いながら椿の向かい側の席に座る。顔を見るとなぜか涙の雫が頬を伝っていた。
「もしかして冷やし中華、嫌いだった?」
心配になって顔を覗き見ながら言うと、椿はブルブルと首を振った。それから手の甲で涙を拭う。
「いや、ちゃんとした料理が食べられるなんて久しぶりだなと思って」
寂しげに椿は言った。なんだかしんみりとした雰囲気がリビングに漂った感じがして「そっか」と返すことしかできなかった。
「いただきます」
二人ほぼ同時に手を合わせて、それから箸に手をつける。椿は中華麺をズルズルと食べると「うまい!」と嬉しそうに叫んだ。
それにホッと胸を撫で下ろしてから、私も中華麺を口に運ぶ。味は何にも感じられなかった。どうしてだろうか。予想できるのは椿の微笑みの裏を知ったショックからだと思う。
私は大木公園で大木から転落した日から、すっかり食事の味を感じなくなってしまった。最初は仁菜の自殺もあったからそのショックかと思っていた。
なんだか最近、違うような気もしてきた。仁菜の幽霊に出会えたから。咲結とまた友達になれたから。椿の優しさと悲しみに触れたから。きっと味を感じないのはショックからじゃない。他の理由があるんだ。その正体はまだ謎に満ちているけれど。
「胡桃、どうした?」
そう言いながら椿の向かい側の席に座る。顔を見るとなぜか涙の雫が頬を伝っていた。
「もしかして冷やし中華、嫌いだった?」
心配になって顔を覗き見ながら言うと、椿はブルブルと首を振った。それから手の甲で涙を拭う。
「いや、ちゃんとした料理が食べられるなんて久しぶりだなと思って」
寂しげに椿は言った。なんだかしんみりとした雰囲気がリビングに漂った感じがして「そっか」と返すことしかできなかった。
「いただきます」
二人ほぼ同時に手を合わせて、それから箸に手をつける。椿は中華麺をズルズルと食べると「うまい!」と嬉しそうに叫んだ。
それにホッと胸を撫で下ろしてから、私も中華麺を口に運ぶ。味は何にも感じられなかった。どうしてだろうか。予想できるのは椿の微笑みの裏を知ったショックからだと思う。
私は大木公園で大木から転落した日から、すっかり食事の味を感じなくなってしまった。最初は仁菜の自殺もあったからそのショックかと思っていた。
なんだか最近、違うような気もしてきた。仁菜の幽霊に出会えたから。咲結とまた友達になれたから。椿の優しさと悲しみに触れたから。きっと味を感じないのはショックからじゃない。他の理由があるんだ。その正体はまだ謎に満ちているけれど。
「胡桃、どうした?」


