夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

「わかった。無理はするなよ」

そう言ってテーブルの方へ行く。

無理してるのは椿の方なのでは?頭に疑問が生まれたけれど、ブルブルと首を振り、キッチンへ向かった。

鍋に湯を沸かし、その間に冷蔵庫から取り出したきゅうりとトマトを千切りにする。とき卵をフライパンで狐色になるまで焼き、細く切る。

椿をここに連れてきたのはいいけれど、どうしよう。最近親からはちっとも連絡が来ないし、いつ帰ってくるかもわからない。その上椿の両親にいつ見つかるかもわからない。父なら警察だから好都合だけれど、母なら地獄だ。良からぬことが起こりかねない。

仁菜には任せるよって言われたけれど、私なんかにできるのかな。頭の中には不安ばかりが巡る。

チラリと椿を見てみる。疲れているのかテーブルに顔をうずめていた。きっと寝ているのだろう。

思えば、椿は私の前でよく微笑みを浮かべてくれる。最初は仁菜を失った私を慰めてくれてるみたいで温かく見えていた。でもその微笑みの裏を知った今、ひどく切なげに見えてくる。無理して笑っているのではないかと心のどこかで思う。

湯が沸いた音で我に返る。中華麺を手早く茹でて、その間に味付け用に添えるレモンを輪切りにする。西園家は酸っぱいものが好きな人が多く、唐揚げや鮭にもレモンをかけて食べているのだ。

麺が茹で上がったので皿に盛り、先程千切りにしたきゅうりとトマト、焼いた細切り卵をのせる。端にレモンを添えて、めんつゆをかける。これで西園家の冷やし中華の完成だ。

皿をテーブルに持っていくとタイミングよく、椿が体を起こした。まるでさっきまで寝ているフリをしていたようだ。