梅雨の季節特有の生ぬるい風が窓から吹き込んでくる中、私は屋上へ続く階段を上っていた。

理由は一つ。私の友達の様子が二ヶ月前かららしくないし、何だか嫌な予感を感じたからだ。

その人の名前は仁菜《にな》。私の幼い頃からのたった一人の友達だ。コミュニケーション能力が高く、初対面の人ともすぐに仲良くなれてしまう。おかげで小中とクラスでは人気者だった。私の憧れの存在でもある。

そんな彼女は人見知りで孤立しがちな私とよく一緒にいてくれた。幼い頃からの友達というのもあるが、何より一緒にいるとお互い落ち着くからだ。
辛いときも嬉しいときも一緒にいて、壁を乗り越えてきた。そして私が遠い高校に行くと言えば喜んでついてきてくれた。あとから聞いたことだけど、自分の進路にもぴったりの高校だったらしい。

それから今は三ヶ月がたっている。運の悪いことにクラスは違って、登下校と昼休みしか一緒にいることはできない。

クラスでの近況を聞いてもなかなか答えてくれないし、忘れ物もここ二ヶ月で増えてきた。まるで誰かにでも盗まれてるんじゃないかと思うぐらいそれは多く、毎日のようにある。私はらしくないと思いながら文句一つ言わずに、教科書とかシャーペンを貸しているけれど、さすがに心配だ。

いじめられてるのではないかと思ったときもある。でも人気者だった彼女がそうなるとは到底想像できない。もし本当だったとしても信じられないだろう。

屋上への扉のドアノブに手をかける。立ち入り禁止という貼り紙がされているが、鍵が壊れていたので、誰が立ち入っていてもおかしくないだろう。

登校時間なので太陽はまだ上りはじめたばかりだ。分厚い雲の隙間からまばゆい光を放っている。