「……わからないよ、」

「なんでわかんないの?」

「なんで、って、わかるわけないじゃん」

「じゃあ聞いてて」

「…っ、やだよ」

「澪央」



嫌だ、聞きたくない。

シキの手のひらから無理矢理逃げようとしても全然放してくれなくて、涙が滲んで、泣きそうになれば、シキは無理矢理私をベッドの上に引っ張った。


シキの目の前に座らされて、逃がさないように両手をつかまれた。


「……ききたく、ないよ」

「……、」

「なんで、聞かなきゃいけないの、もう、これ以上苦しい思いしたくない、シキがわたしじゃない誰かを好きだなんて、どうして聞かなきゃいけないの、」

「みお、」

「もうやだ、シキなんて、嫌い」



嫌い、なんて思っていないことを口にして、
後悔よりも、早く逃げたい、だけが先行していた。




「俺は、好きだよ」

「……っ、?」


「俺が好きなのは、ずっと、澪央だよ」




ぴた、と涙も、言葉も、呼吸も、時間も、

全部止まったような気がした。




シキのベッドの上で、わたしとおんなじ視線の先に、シキがいる。

わたしの瞳を見て、シキはもう一度、息を吐いた。



「聞きたくないなんて、言うなよ、」