この手のひらは、シキが目を覚ますまでに離さなければいけない。
けれどそれまでは、離したくないと思った。


シキの夢の中にいたかった。
もし、シキが夢の中でわたしを手放したくないと言ってくれるのだったら、一生シキの夢の中で生きていたいと思った。

身動きは取れないし、離そうと思ってもシキはちっとも離してくれなくて、気づけばそのまま私も眠っていた。




夢を見た。

もしかしたらシキとおんなじ夢を見ているのかもしれないと思った。


あの日の部屋だった。
わたしがシキから逃げようとしたところを、シキは引き留めてそれから精いっぱいにわたしのことを抱きしめるんだ。



いかないで、
そばにいてほしい。



わたしは泣いていて、シキの声は震えていた。
シキの背中にそっと手をまわして、離れたくないとばかりに抱きしめていた。



大切だ、と言われているようだった。



夢だとわかっているのに、覚めてほしくないと思った。

ずっと眠りについていたい、シキと手をつないで、抱きしめて、それから優しいキスをしてほしい。



もう私を慰めるようなことをしないで、わたしだけを想ってほしい。



「……ミオ、すきだよ」


夢の中で、シキがわたしに好きだと言っていた。



わたしもすきだよ、

口にしようとしたら、シキが離れていって、世界は真っ暗になった。