さよならは響かない





「……シキ、?」


わたしの声にシキは反応しなかった。

恐る恐るベッドに近づけば、シキは眠っていた。



シキの寝顔を見るのは久しぶりだった。

すやすやと眠っている、相変わらず整った顔。
目を閉じているシキはなんだか子供みたいで、昔からちっとも変わってないと思った。



荷物を降ろして、ブレザーを脱いでベッドの下に置く。

無意識に本棚に目を向ければ、相変わらず写真立てが置いてあった。



「……、なん、で」


その横に、青いピアスが二つ並んでいた。

あの日私が置いていったものと、シキのピアスがお揃いに並んでいた。




捨ててない、

わざとらしく写真立ての横に並べられているそれに、心が痛かった。
なんで捨てていないのかなんて、都合よくとらえてしまいそうで、見なかったふりをした。





リビングに降りて、アイスを冷凍庫に入れて、ほかのものを冷蔵庫にしまう。
シキが起きたら、食べたいものを聞いてまた取りに行けばいい。


もう一度階段を上ってシキの部屋の扉を開ければ、小さい声で、わたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。



「み、お、」

「……シキ、起きた?」



ベッドに近づけば、シキは目をつぶったまんま苦しそうに顔をクシャっと歪めて、枕にぎゅっと力を込めた。


「……みお、」