さよならは響かない



「…いいんじゃない?別に、」

「……、」

「幼馴染なことには、変わりないんだから」



なによりも、心配なくせに。

梨可がおかしそうに笑って、バレバレの見透かされた気持ちを言葉にされてしまえば、うなずくしかなかった。



シキは体調を崩しているんだからしょうがない、
シキは熱で苦しんでいるかもしれないのに、それを放置するわけにもいかないのだ。


いっそ、普通の幼馴染に戻れればいいのに。
お互いの体調を気遣って、ふたりの時間が合えば一緒にゲームをしたり、漫画を貸したり、ご飯を食べたり。

ぐるぐると頭の中で考えていた。
恋人じゃなくてもシキといられる方法を、わたしは前からずっと考えている。



授業なんて頭に入らないままあっという間に午後の2時間が終わってしまって、HRも終わり、いつも通り担任がそそくさと教室を出ていく。




「わたし、図書室いくから」

「わかった、」

「行くんでしょ?蜂屋のとこ」

「……うん、」



正直心は複雑だ。

朝、シキから顔を背けられたことにいちいち傷ついている自分がいて、部屋に行ったところでまた拒絶されるのが怖かった。