さよならは響かない





隣のクラスのあの女の子がクラスの男子にシキの居場所を問えば、「体調悪いから帰った」と言っていた。

確かに朝からダルそうな顔をしていたよな、なんていう会話を大きな声でするもんだから嫌でも耳に入ってきて、梨可には呆れた顔をされた。



「心配なら、連絡すれば?」

「できるわけないでしょ、普通に」

「本人じゃなくても、お兄ちゃんとかに連絡すればいいじゃん」



シキは体調を崩すとすごく熱が出る。
滅多に崩さないけど、一回がすごく重くて、3日くらい寝込む。


最後にそれくらい体調を崩したのは中学生のころだったような気もするし、珍しいけどいつも心配でそばにいたから覚えているのだ。

わたしが体調崩したときはシキがずっと隣にいてくれた、幼馴染だったころから、ずっとだ。




梨可に言われたとおりに佐久にいに連絡を取れば、本当にシキは家で寝ているらしい。

午前中授業のなかったお姉ちゃんが佐久にいから連絡を受けて面倒を見ていたらしいけど、先ほど家を出たという。

シキは思っていた通り熱があって、帰ってからずっと寝込んでいるという。



お姉ちゃんからもメッセージが来ていて、学校終わりにゼリーや果物を買って帰ってあげてほしいと言われた。

シキのお母さんは今日夜まで帰ってこないらしい。