ガタガタと、教室を去っていく人たち。
部活がめんどくさいと嘆いていたり、掃除当番の話などの会話が飛び交っている中で、彼は自分の席から立ち上がり、教室の後ろの扉に向かって足を進める。


カタン、

わたしの机の斜め前の席にぶつかる音が聞こえて、わたしはスクールバッグのチャックをしめた。

机の中から飛び出したプリント用紙が、ひらひらとわたしの机の前におっこちる。


それを拾うためにわざとらしく腰を下げたことで、その姿を嫌でも視界にとらえることになる。


視線はプリントが落ちていたそこから視線をずらさなかった。
ふたりの視線は、絡まないままおんなじ法を見ていた。



「──十時半、」

「……ッ、」




あっという間にプリントを拾い上げて、何事もなかったようにそれを机の上に置き、わたしの前を一切見ずに通過する。




……時間を指定するその言葉は、わたし以外には、届いていない。

言われなくても覚えてしまっているその時間に、今日も私はシキの言うことをおとなしく従ってしまうんだとバッグの上でその持ち手を握りしめた。