・
・
「じゃあまたね」
「うん、また明日ね」
放課後、HRが終われば教室の後ろのドアから廊下の壁にもたれかかっている常盤先輩を見つける。
図書室による梨可に手を振って、バッグに急いで荷物を詰め込んだ。
「ハーチっ!」
後ろの扉、先輩の姿を隠すように扉から顔を出して現れた女の子は、一瞬で昼休みに彼に話しかけていた女の子だってことに気づく。
最近、この子といる場面ばかり見ている気がする。
おかげで、こころにはもやもやが募っている。
浮気をするのはしょうがないと思っている。
そもそも、わたしに元から気持ちを持っていないのだから、浮気というのもおかしな話なのかもしれない。
けれど、たった一人に絞るのはやめてほしい。
一人を選んでしまっては、もう私の必要性がなくなってしまうような気がして、嫌だ。
シキが扉のほうに顔を向ける。
わたしよりずっと窓際の前から二番目の席で、彼は「おー」と彼女を捉えた。
そのくだりを見ていたと思われないように視線をバッグにずらす。
もうとっくにしまい終わっている教科書を、あたかもまだ帰る準備ができていないようにごまかしていた。



