手をつなぐのも、キスをするのも、その先も。
わたしはシキ以外に絶対に許さない。



わたしに彼氏がいるということを知っているのにそれでも誘ってくる人に、いい人なんてあまりいないと思う。というか正直、いない。
でもその相手が相手だから、ほんのお遊び程度でわたしによって来る人は少なくない。



蜂屋司輝は来るものを拒まないらしい。
ただし去る者を追うこともしない。

適当に、のらりくらりと生きている。
形式だけの恋人に、わたしを置いて。



そんな恋人を持っているせいで、わたしも同じようなものだと思っている人が多いらしい。
けれどわたしはシキの真似をしているだけで、その気なんて一ミリもないし、好きでもない人に触れられるのは無理だ。



シキは、それができる。

だって私を好きなわけではないから。



シキはわたしに遠慮なく触れてくる。
わたしはそれを受け入れる。


その唇が重なるたびに、わたしはいつも、わたしじゃない誰かにおんなじことをしているのかと思い、苦しくて、泣きそうになる。



シキはやっぱり、それに気づかない。






「あんたたちは、やっぱり馬鹿だよ」


今日も零される梨可の真っ当な言葉に、黙ってうなずいた。