狼男  無限自殺 編



改めて椿刑事部長の対面に座ったところで、馴染みの記者が纏めてくれたファイルを広げる。


「先日1課の応援として携わった笹野ミレイさんの件です。」


「あの自殺のヤマは遺族とも話がついたのでは?」


「こちらをご覧ください。
この1年で発生した【類似】事案です。」


「・・・・類似・・・?」


「ミレイさんの他にもいたんです。

遺された人達が、“何故?”という答えを出せない不可解な自殺が・・!」


記者が調べてくれた資料を1つ1つ椿刑事部長にも説明する。


どこからどう見ても“自殺”と判断された事案。

どこからどう見ても“他殺の線は無い”と判断された人達。


飛び降り、首吊り、薬毒、
一酸化炭素、リストカット・・


様々な手法はあれど、

誰もが口を揃える“幸せ”や“喜び”・・“死”とは正反対の“幸福”だったはずの自殺体・・。




「・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・。」


しばらく無言の・・静寂の時間が包む。


過ぎた事をいちいち悔やんではいられないが、

もし所轄止まりにならなくて、全てが椿刑事部長のお耳にも入っていれば、

もっと早くこの【違和感】に気づけたかもしれない・・。


俺と同じ様に【まさか?】と疑問を持ってもらえた・・。


そう物語るように、アイコンタクトで椿刑事部長との考えが共通感覚される。