「バッキャロー!!!!

アオイも、彼氏の少年も苦しんでた事も見抜けないで何が親だ!!

ガキ同士のイジメも治められない教師のくせに何が義務教育だ!!

文句があるならこっちまで来いや。
警察でも軍隊でも連れてこい。

とにかくこいつらは俺が預かる!!!」




まばたきをしているかのように、

まるで夢のように、あっという間に僕達を“地獄”から引っ張り出してくれる光が射した。


佐々木さんと寝そべっていた最後の睡眠。

自転車に乗ったお巡りさんに照らされた懐中電灯。


連れて行かれた交番。

佐々木さんが咄嗟に出した“オジサン”の名前。

やがて・・・
向かえに来てくれた男の人・・・。



“親には言えない”
“先生に言っても何もしてくれない”

“逃げられないから死ぬ”
“僕達にはその選択肢しかない”


そんな僕と佐々木さんが抱いていた“常識”をぶち壊してくれた・・・オジサン・・。


電話を握りしめ、
僕の両親に電話した後・・

佐々木さんの親・・ご自身の弟さんとの激しい口論を切り終えた。



「ガハハ!アオイ!
それにしても大きくなったな!」


佐々木さんの表情を見てすぐに分かった。

この人は僕達の周りには居なかったタイプの大人・・僕達に“自由”を見せてくれる人・・。



「五味!」


「は、はい・・。」


「お前の事は何て呼べばいいんだ?
“彼氏君”か?“お婿さん”か?」


「あ、あ・・・五味で・・
大丈夫です・・。」


「ガハハ!中学がなんぼのもんじゃい。
勉強なら近所の爺婆に教えてもらえ。

お前ら死にたいなら、
今日からキャベツ農家になれ!!

死ぬのが馬鹿らしくなるぐらい働かせてやる!」



“学校”という社会から逃げ出して、“ド田舎”、“集落”という新たな社会に辿り着いた。


僕は14歳。佐々木さんは13歳。


「ここでも死にたくなったらもう遠慮はねぇ!首吊りの縄は俺が用意しちゃる!」


僕達の前に初めて・・
“死ぬ”“逃げる”以外の・・

“第3の選択肢”が与えられた。


「だが避妊はちゃんとしろ!

結婚出来るのはアオイが16歳以上、
五味が18歳以上になってからだ!!」



僕は佐々木さんの彼氏でも何でも無いという誤解を解くのは大変だったけど、


佐々木さんとの涙と涙が合った後・・
僕達は・・第3の道を選ぶことにした。