近くの駐車場に停めて、
3人で歩いてやって来た稚児ヶ淵。
時間帯もあの時と同じにしてくれた粋な演出に感謝しながら、
私達をオレンジ色に射す夕陽。
江ノ島の西南端に位置する・・富士山の向こうに沈む夕陽の美しさを感じられる名所。
「ここで仲直りしたのか?」
「はい・・。あ、まぁ・・・
その前にもうお互いすっかりケンカ熱は冷めてましたけど・・。」
「ド阿呆。ただの夕陽じゃねぇか。
・・さっぱり分からん。」
「あ、そうだキョウスケ忘れてた。
お姫様抱っこして。」
思い出して哀しいからじゃなくて、
懐かしさを思い出して嬉しかったから。
このオレンジに切なさを覚えたからじゃなくて、感動を覚えたから。
隣で急にお姫様と王子様になるユカリさんと藪さんを横目に・・・
「・・・・・・・・・・・・・・。」
お二人曰く“ただの空と雲”を見ながら、
・・涙が溢れてくる・・・。
あの時と同じ様に・・・
シンジ君の左肩に寄りかかりながら、いつまでも見上げていたあの時と同じ様に、
視界は滲んだオレンジ色になっ・・・
「アンナさん。」
「・・・スッ・・はい。」
「そういえば、上原シンジは結局1月1日になった瞬間、何をしたかったんですか?」
「・・・・・・・・・・・・・。」



