穂先輩が甘々すぎる。




名残惜しさを感じつつそれを悟られないように穂先輩に声援を送ると、先輩は柔らかく微笑んでくれた。



「ほたるはもう帰る?」


「はい、帰ります。」


「わかった。遅くなってごめん、気をつけて帰れよ。」



そんなふうに気遣いの言葉をくれる先輩が、優しいと思った。


私は首を振って、座ったままぺこりと頭を下げた。



「いえ。あの…美味しいお店を紹介してくださってありがとうございました。」


「全然。またきて。」


「はいっ!」



うん、絶対に、またここにきたい。


私は穂先輩に大きく頷いて、再び笑った。


そして、私が伝票を取ろうと手を伸ばすと。


穂先輩が、どこか私が伝票を取るのを阻止するように、その長い指で私より先に素早くスッと伝票を取っていってしまった。



「あっ…」



私は小さく声をあげて、伝票へ向かって伸ばしかけた手を引っ込めた。