穂先輩はブラックコーヒーを啜りながら、安堵した表情を浮かべ、上目遣いで私ににこりと笑いかけてきた。
穂先輩の綺麗な二重の瞳に私の心が射抜かれて、喉がつっかえる感覚に陥る。
………っ。
思わず、心臓が止まりそうになっちゃった。
「は、はい…!」
穂先輩の表情にドキッとしてしまった私は、短く返事をして慌てて視線をケーキに戻した。
…人の目を見ることが苦手だった私が、意識して視線を逸らすなんて。
穂先輩だから…きちんと目を見て話せるんだろう。
一歩、また苦手を克服した気分だ。
円華ちゃんと小夏ちゃんと一緒にいるときも意識しているし、むしろだいぶ慣れて無意識に人の目を見られるようになったと思う。
本当に…なにもかも、穂先輩のおかげ。
穂先輩は、急に慌てた私を見ておかしそうに小さく笑った。
そのあとは、ふたりでたわいもない会話をした。


