「わぁ、美味しそうです…!」
「だろ。」
得意げな表情をした穂先輩の目の前には、コーヒーが一杯置かれているだけ。
そういえば、ケーキひとつしか頼んでなかったな。
「先輩は、ケーキ食べないんですか?」
「うん、俺はいい。ほたる、召し上がれ。」
「い、いただきます。」
穂先輩に促されて、私は手を合わせ軽く頭を傾けた。
頭を傾けて距離が近くなったコーヒーが、私の鼻腔をくすぐる。
甘党の私は、コーヒーにお砂糖とミルクをいっぱい入れるのも好きだけど…ブラックコーヒーも好きなんだ。
とってもいい香りがするし、今日はブラックでコーヒー本来の味を楽しみたい。
コーヒーのカップを持ち上げ、口元を寄せてふーっとコーヒーを冷ます。
そんな私をみて、穂先輩が首を傾げた。


