穂先輩とその女の人が紛れている人混みに、一瞬で鉛のように重くなった足を無理矢理動かして近づいた。


近づきすぎるとあまり背の高くない私は人の中に埋もれてしまうことや、そしてふたりに気がつかれないようにと、ほどほどの距離を保つ。


少し離れた距離から目を凝らして。


女の人が穂先輩の方を向いて、穂先輩もその人を見下ろした瞬間に、ふたりの顔が見えた。


穂先輩より少しだけ背の低い…女性にしては背の高いベリーショートヘアの人…。


…やっぱり、そうだ。


穂先輩のバイト先にいた、穂先輩と仲の良さそうだったあの人だ。


私は、その場で固まってしまった。


建物側に立ち止まったから、通行人の妨げにはなっていない。


あの女の人は…この辺が近所なのかな…?


穂先輩とあの人は、休みの日に一緒に出かけるくらい…仲がいいんだ。