巡り行く季節の中心から【連載中】

「それで何だって?メモるからもう一度ゆっくりお願いできるかしら」
「もちろん」


ナツの隣に移動して、また呪文を唱え始める米澤。
やっぱり、というかなんというか、読書好きのキャラクターは頭がいいと相場が決まっているもんだよな、うん。


「なあなあ、BTB液ってカクテルみたいでウマそうじゃね?」


と教科書を指差しながら陽気に近付いて来たのはシゲだ。
飲みたきゃ好きなだけ飲むがいい。化学反応が奇跡を起こして馬鹿が治るかもしれない。


「ちょっと金沢、何しに来たのよ」
「米澤ちゃんと一緒に勉強するために決まってるジャン」


語尾に音符マークが付きそうなくらい弾んだ声で言いやがった。どんだけ下心オープンな野郎だ。
いささか羨ましいと感じてしまうのが情けない。