巡り行く季節の中心から【連載中】

「確か水兵リーベ僕の船、七曲がりシップルなんたらかんたら~……」
「水兵リーベ僕の船、七曲がりシップスクラークか、閣下スコッチバクローマン、鉄子にどうせ会えんが、ゲルマン斡旋ブローカー……だったかな?」


なんの前触れもなく耳に流れ込んできた、ゲームに登場する最上級魔法の呪文を聞いているような錯覚に陥る長文。
発した主は前髪を短く切りそろえたての米澤だった。


「冬香、なんなの今の?」
「周期表の覚え方だよ?後半はバリエーション豊富だから人によってバラつきもあるんだけどね」
「アンタよくそんなの覚えてるわねぇ」
「昔読んだ本に書いてあったのを偶然覚えてただけだよ」


偶然でここまで覚えているのなら上等だろう。
米澤なら円周率の小数点以下だって、どうせ役に立たないと分かっていてもスラスラと言えるようになりそうだ。