「にしても夏枝髪いじるの上手だね~」
「ふふん、これでも美容師目指してるのよ!」


意気揚々とブイサインを作る芳賀さん。
芳賀さんの将来の夢が美容師とは初耳ですね。
努力家な芳賀さんならきっと叶うでしょう。


「本当にお上手ですね」
「あっ、秋人くん!見てみて、冬香の前髪すっきりさせてみたのよ」


ご機嫌に芳賀さんはそう言って、恥ずかしそうに俯く米澤さんの顔を強制的にこちらに向かせた。
次の瞬間、僕は思考回路が停止しかけるほど呆気にとられた。
……だって、こんなことがあっていいのだろうか?


「……ほなみ?」


まるで息を吐くのと同じくらい、無意識にその名を口にしてしまう。
どうして今まで気付かなかったのか不思議なくらいだ。
しかし米澤さんはこれまで長い前髪で目元を隠していたし、僕が彼女をこんな近距離でまじまじと見たのはこれが始めてなのだから、当然と言えば当然か。