新しい制服に身を包む。

チェック柄の,ブレザーに,薄茶色のミニスカート
そして、赤く派手なリボン。
髪はきちんと結んで,怪我ひとつ無い手足
確認すると,部屋の中にある幼い頃亡くなった祖母から貰った鏡の前で立ち
深く深呼吸をして,鏡に小さな音をたてて,顔をつける。

「やるぞ...私は...!」

11月25日

私は,今日から
鴨瀬高校の一員となって新しいスタートを切った。


私の父親は,
営業マンで色々な県に飛び交い仕事を行っている。
私は,そんな父を昔から強く憧れの気持ちを持っていた。
しかし、そんな気持ちもいつからか,
希望から絶望に変化した。
仲良くなった子がいても,
数ヶ月経つと,すぐ転校
ずっとその繰り返しで,深い仲になる友人は今まで1人もできなかった。しかし,父親の職業に文句を言うつもりは全く無い。
そして、10月10日私は,
この鴨瀬高校のある
鴨瀬地区 鴨瀬南町に越してきた。
綺麗な洋風でレンガの壁で作られた家
これが私のこれからの家。
こんな立派な家に住めるのは,今までの父親と母親の努力の証なのだろう と,再び確認した。
母親は,小学校の職員免許を獲得しており,
今日から
みどり小学校の3年生の担任を担当する。
母親の気さくで真面目な1面が生徒から深く人気があるらしく,いつも転校先の小学校ではとても好評であると,母親が先日教えてくれた。
母親の声が2階の私の部屋まで響き渡った。
その声に,妹も部屋から出てきて丁度私と妹が軽くぶつかった。
前で転けて,拗ねているのは
私の妹の
音瀬萌音
現在,中学2年生
私と妹は3つ差で,今私は
8月10日の誕生日を終えて無事17歳になった。
あと1年で卒業 と,思うと少し虚しい気持ちになるが高校生になって転校するのはこれで,4回目なのであまり深い思い出は各高校には残っていない。
妹と軽く雑談をしながら,1階へ降りると
母親お手製のフレンチトーストが,食卓の上に並べられていた。
その横には,日本人の愛する味噌汁が置いてある。

妹と母親と,私の価値観は大きく違う。
妹と母親の世界観では
今フレンチトーストと,味噌汁のコンビにとても気に入っているが
私には全く理解できない。
フレンチトーストは洋食
味噌汁は和食
私たちは,純日本人だ。
日本人なら,そんな曖昧な食べ方をされては少し困ってしまう。
と,脳内で2人に対して文句を言いながらでも,朝食を食べ終え
私は家から出た。

今日から,私の新しい生活が始まる。
少しワクワクしながら,
私は新しい世界の1歩を踏み出した。